2008.09.08 終
「もう誰も何も信じらんない」
一度ぎゅうと目を閉じて深呼吸。
彼が死んだ。それは三日前のことだ。
信じられるのが彼だけだった私は、信じるものがなくなったこの世界からいま旅立とうとしている。
今会いに行くわ。少しだけ待っていてね。
そうっと下を見下ろせばびゅうびゅうと風が背中をおしてくれる。
柵から手を離せば私の体はゆっくりと地上へと近づいていく。
やっと会えるわ、ぐちゃぐちゃになった私でも気づいてくれるかしら、早く会い――――
完
(その先に世界があると信じたのは誰でもない、自分だったくせに)
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