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紅い徒花

2009.05.16 目隠し

ただそれだけだった。
あの子に何も見せたくなかった。
煌びやかに見える宝石も、華やかなふりをするドレスも。
――私でさえも。
だからね、あの子の為じゃなくって自己満足だったんです。結局は。
キリトリ線というべきかな。ある日突然、彼女に何も見せたくないなら彼女以外のすべてを切捨てちゃえって思っちゃって。そりゃ思考がそこにぶつかったなら迷うことは何一つないわけで。強いて言うなら、あの子に会えなくなるなと少し寂しい思いでそれでももう決定事項になってて。
……ごめんなさいね、きっと今一人きりであの子は泣いているんでしょうね。
ああでも後悔なんてしてないんです、結局のところ目的は達成できたわけですから。これであの子の周りから私を含むすべてのものを除外できたんですから!


彼女の演説に、誰もが涙を流すこともできずに立ちすくんだ。
満足げに語る彼女を、呆然と見つめる数多の黒服たち。

黒縁の写真たての中の、彼女の妹だけが静かに微笑んでいた。

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